
店頭用POP配布
店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
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茨城県西部の肥沃なローム層が広がる一帯に、「オーガニックファーム つくばの風」という農場があります。新潟の兼業農家で育った創業者・山本稔さんは茨城へ移住し、有機農業の道を歩みはじめました。その後、有機JAS制度がスタートした2000年に出荷を開始し、露地栽培を中心に長年コツコツと土づくりと向き合ってきました。
その中心にあるのがにんじんをはじめとした露地野菜の栽培です。天候の影響を強く受ける有機栽培において、安定した生産量を維持するには高い技術と根気が欠かせません。山本さんはその難しさを楽しみながら、手間を惜しまず有機野菜を育て続けてきました。近年、農場では新しい体制づくりが進みつつあります。その変化は、これからの有機農業のモデルとなり得るものでした。
つくばの風ではここ数年で、栽培と運営のバランスの再構築を進めています。その背景には、以前からつくばの風の野菜を扱ってきたイーサポートリンク株式会社の存在がありました。長い取引の中で現場をよく理解してきた同社の三國さんが、新たに代表取締役として農場を支える役割を担うようになったのです。
「山本さんが栽培に集中できる環境を整えたいと思ったんです」
と三國さんは話します。
これまで山本さんは、栽培・営業・経理・行政手続きなど多岐にわたる業務を一手に担っていました。露地での有機栽培は、天候と向き合いながら日々の判断を積み重ねることが欠かせません。そこで三國さんをはじめとしたサポートチームが、出荷管理や販路調整など“外側の業務”を引き受け、山本さんが畑に向き合える時間を確保できる体制が整いました。
また、日々の作業時間や工程を記録する簡易ツールが導入され、どの作業にどれほどの手間がかかっているのかが明確になりました。農場全体の働き方がさらに可視化され、有機栽培の技術を守るための土台が強くなったという印象を受けました。

つくばの風では、にんじんを中心にさまざまな有機野菜を栽培しています。冬と春夏の二期作でにんじんの供給を安定させつつ、さつまいもやカブ、冬のちぢみほうれん草、試験的に取り組むケールなど、多品目を組み合わせながら年間のリズムを整えています。
気象条件が不安定な近年では、単一作物への依存は大きなリスクとなります。特に暑さが厳しかった年は、夏どりのにんじんが思うように育たず、農場全体のバランスを見直す必要がありました。その経験から、つくばの風では品目の組み合わせを柔軟に調整し、栽培計画を毎年少しずつチューニングしています。
有機栽培は「作りたい野菜だけを作る」のではなく、気候や市場の動きを読み取りながら、現場の判断を重ねていく仕事です。にんじんを軸としつつ、環境に合わせて多品目を組み合わせる姿勢は、まさに有機農業の柔軟さそのものだと感じます。

体制づくりが進んだことで、販路にも確かな広がりが生まれています。かつては直売所や宅配サービスが中心でしたが、近年は生協に加えて大手量販店や広域スーパーとの取引がはじまり、より多くの消費者の目に触れる機会が増えました。
大口注文が入る際は、スタッフ全員が出荷場に集まり、一斉に調整作業を行います。以前のように作業が細かく分散するのではなく、「今日はみんなで出荷」「今日は全員で畑へ」という日が増え、同時にコミュニケーションを取る時間も増えたためにチームとしての一体感も強くなったといいます。
また、量販店では店舗ごとに棚の高さや什器の仕様が異なるため、営業担当が売り場を確認し、葉の長さや袋詰めの見せ方を調整することもあります。有機野菜の魅力をわかりやすく届けるための工夫が、こうした小さな改善の積み重ねから生まれています。
注文が集中する大変な場面もありますが、その経験を通じて販売先との信頼関係が深まり、次の取引につながっているといいます。野菜を届ける仕事は、栽培だけでなく、関係づくりやチームワークによって支えられていました。

つくばの風が見据えるのは、農場単体の発展だけではありません。近隣の農家と協力しながら、有機農業を続けられる地域の仕組みをつくりたいという思いがあります。三國さんは、取引先として農場に関わっていた頃から、気象リスクや資材高騰、人材不足などの課題を肌で感じてきたといいます。
「どの農家さんも同じ課題を抱えています。だからこそ、競争ではなく協力で乗り越えたいんです」
天候不順による不作や作業負担は、有機に限らず多くの農家に共通する課題です。作業データの共有、気象情報の活用、販売や出荷の連携など、小さな協働の積み重ねが、有機農業を地域に根付かせる大きな力になるはずです。
創業以来、山本さんが向き合ってきた有機栽培の技術と姿勢は、今も農場の根幹にあります。その技術を守りながら、現場の働き方や販路、地域とのつながりを少しずつ整えていくことは、これからの有機農業には欠かせません。体制の変化や販路の広がりは、野菜づくりを続けるための土台を強くし、地域の農家との協力関係を生み、さらには若い世代にとって魅力ある“働く場”へとつながっていくでしょう。
つくばの風の挑戦は、有機農業がこれからも選ばれ続けていくためのヒントに満ちあふれていました。
代表取締役社長:三國 宏行
住所:〒300-2647 茨城県つくば市手子生997-1
URL:https://www.tsukubanokaze.net/
主な栽培品目:にんじん、かぶ、ちぢみほうれん草など