
店頭用POP配布
店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
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茨城県東海村では、さつまいもが古くから人々の暮らしを支えてきました。ここで生まれた株式会社照沼は、もともと地域の芋を扱う問屋として歩みを始めましたが、やがて自ら畑に立ち、干し芋づくりまで手がける現在のかたちへと広がっていきます。根底にあるのは、「安心して食べてもらえるものを届けたい」という先代から受け継いだ思いでした。
20年前、照沼は土壌消毒を前提とした従来の栽培方法を手放し、有機栽培へ大きく舵を切りました。土をすべて“ゼロ”に戻す土壌洗浄や化学肥料有りきの農法ではなく、「畑の力を信じ、土とともに育つ」を選んだことが出発点だったのです。
自然を相手にする有機栽培は、順調にいく年もあれば、気候に揺さぶられる年もあります。それでも照沼は茨城の土に向き合い続け、地域に合った育て方を探りながら20年かけて独自の有機を築いてきました。その挑戦が、日本未来農業グループとの出会いによって次のステージへ向かおうとしています。外部の視点が加わったことで、照沼の有機をより持続可能にするための仕組みづくりが進み始めているのです。
今回お話を伺った船奥さんは、食品流通の現場で培った知見を持つ方です。そしてその専門性は「有機をよりよく続けていくための裏側の整備」に活かされています。これまで経験で判断していた土壌の状態を、数値として捉える取り組みが始まりました。土壌分析や気象データの蓄積によって、畑ごとの差異が見えるようになってきたのです。
有機農業は「やれば必ず同じ結果が返ってくるもの」ではありません。自然由来の肥料を使うため反応が畑によって異なり、多くの有機農家が経験に頼らざるを得ない現実があります。そこで照沼は、「経験」と「数値」の両輪で畑を理解する方向へと踏み出しました。
たとえば、温度上昇で黒マルチが熱を持ち過ぎ、苗の毛細根が焼けてしまう問題に対しては、白マルチの試験導入を計画しています。畑ごとに小さく区画を分け、複数の試験を同時に行うことで、翌年以降の判断材料を積み重ねている最中です。気候変動が進む中、過去の常識が通用しづらくなっている現代において、照沼の取り組みは「有機栽培を続けるための新しい常識」を自らの手でつくる作業とも言えます。
※黒マルチ・白マルチとは、作物の栽培環境を整えるために使われる農業用資材のことです

有機栽培における最大の負担のひとつが除草です。さつまいもの畑では、夏場は40度近い気温の中で広大な畑を手作業で除草する必要があります。雑草の成長は早く、照沼の畑では一つの区画につき三度の除草が欠かせません。
55ヘクタールという広さは東京ドーム11個分に相当します。この規模の除草をすべて人の力で行うのは容易ではなく、むしろ人の体を守ることこそが重要になるほどです。そこで照沼は、作業時間の見直しや機械導入の検討など、有機栽培を長く続けられるように効率化を進めています。早朝4時から始める夏季シフトも計画し、従業員の体にかかる負担を下げながら有機の品質を維持するための工夫が現場で生まれています。従業員を大切に想い、有機農法を確立していくことが照沼の大事な信念です。
有機農業は「手のかかる農業」と語られることが多いものの、照沼はその手間を単なる負担で終わらせず、持続的に続けられる形へと再構築しようとしています。

有機栽培のさつまいもは、土づくりや気候条件の影響を受けやすいため品質がばらつきやすく、干し芋作りが難しいと言われています。そうした中で、照沼の「謹製」シリーズは、有機でありながら驚くほどやわらかな食感を実現しています。「本当に有機で作った干し芋なの?」と驚かれるほどしっとりと仕上がり、その食べやすさは多くの反響を集めているとのこと。丁寧な加工と蓄積されたノウハウが、照沼ならではの味わいを支えています。
そして、若年層の間でも干し芋を手に取る人が増えてきているようです。韓国発の美容トレンドの影響や、アスリートがリカバリー食として取り入れていることなどが追い風になり、日常のおやつとして選ばれる場面が確かに広がっているのだとか。スポーツ選手の間でも、有機栽培のさつまいもを安心して取り入れたいという声が聞かれるようになり、干し芋を日常のエネルギー補給に使うケースも増えています。地元の小学校では、有機さつまいもを題材にした食育授業の計画が進んでおり、地域の子どもたちが畑と食のつながりに触れる機会が広がりつつあります。
さらに、大手小売企業から有機さつまいもを活用した新商品の相談が寄せられるなど、有機という価値が新たな展開を生み出す場面も増えてきました。
こうしたさまざまな反響は、干し芋の魅力が世代を超えて届き始めている証でもあります。照沼としても、この流れをさらに育て、有機さつまいものおいしさや価値をもっと多くの人に届けていきたいと考えています。

照沼の取り組みが生み出しているのは品質だけではありませんでした。有機に取り組む姿勢に惹かれて仕事を志望する若手が増え、畑づくりに誇りを持つ従業員が育ってくるなど、新しい農業文化の広がりといった面でも変化が出始めています。
照沼が目指す未来は、照沼だけが成長する未来だけではなく新規参入者や他の農家にも使ってもらえる「有機栽培の新モデル」をつくること。有機は難しいと言われる一方で、そのハードルを一つひとつ越えていくためのノウハウを照沼は蓄えてきました。長年の経験に、数値化による裏づけが加わったことで、有機栽培のモデル化に向けた道筋が見えてきているのです。
日本最大規模の有機さつまいも生産者である照沼の使命として、今後も有機農業界全体の向上を掲げ有機生産者ネットワークを広げていきます。
茨城の土で育った一本のさつまいもが、新しい農業の姿をつくる。照沼はその可能性を、これからも丁寧に掘り続けていきます。
代表取締役:久保居 雅基
住所:〒319-1113 茨城県那珂郡東海村照沼601
URL:https://hoshiimo.co.jp/
主な栽培品目:サツマイモ