農家紹介

みよし農園
3年間、全く野菜が売れなかったこともあった。それでも一人、茨城で有機農業を続けていく。

みよし農園

3年間、全く野菜が売れなかったこともあった。それでも一人、茨城で有機農業を続けていく。

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店頭用POP配布

店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
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慣行栽培で感じた違和感から、有機栽培へ移行

茨城県那珂市で「みよし農園」を運営する助川巳義(すけがわ みよし)さん。以前は地元の水戸のインテリア系企業で営業職に就いていましたが、39歳の時に会社が倒産。水戸でサラダほうれん草の水耕栽培を行っている知人のもとで仕事を手伝ったことがきっかけで、農業の世界に興味を持ちました。

しかし、水耕栽培には膨大な初期費用がかかることから、土耕栽培を選択。ちょうどその頃大手外食チェーンの方から「万能ネギを作ってほしい」という依頼が入り、まずは万能ネギから栽培をはじめることにしました。

 

助川さんが驚いたのは、水耕栽培とは違い、土耕栽培では虫や雑草が大量に発生するということ。最初に借りた畑は、なんと雑草取りに2年を要すという結果に...。そしてやっとの思いで万能ネギを育てはじめたのですが、それからも病気、虫、雑草との格闘は終わることはありませんでした。ハウスの中は通気性も悪いので病気が発生しやすく、慣行栽培では農薬を使う必要があります。基準量の農薬を使い続けることでなんとか病気や虫にやられず収穫を迎えましたが、助川さんは自分で育てた野菜を、食べることができませんでした。

 

「農薬を使わずに野菜を育てたい」そう考えた助川さんは、まずは化学肥料は使用するものの、農薬を使う必要がないうちに収穫ができるベビーリーフの栽培を試してみることに。すると虫や病気にやられず、無事に収穫ができたので、今度は化学肥料をやめて、有機栽培に取り組むことにしました。そして有機栽培を始めて3〜4年が経ったころ、晴れて有機JAS認証を取得。それから十数年、有機JAS認証に則した栽培を続けています。

「美味しかったよ!」の言葉を胸に、乗り越えた苦境

現在61歳、農業を始めて25余年の助川さんにとって、今まで一番大変だった時期は東日本大震災発生後の数年間でした。

 

風向きの影響で茨城県に福島第一原発からの放射性物質が降り積もっている、などといった風評が流れたのです。それをきっかけに「茨城県産」というだけで全くと言っていいほど野菜が売れなくなってしまい、いくら良い野菜を作っても、売り先がない、地元の市場に持って行っても買い取ってくれない、文字通りひとつも野菜が売れない日々が3年間も続きました。

 

そして、震災から4年目を迎え、ようやく風評被害が収まってきた頃のこと。数件のスーパーのバイヤーさんから「有機JAS認証のついた野菜を置きたい」という連絡が入り、徐々に販売先の数が戻ってきました。震災前は従業員とパートさんを雇っていましたが、現在はたった1人で14棟のハウスと露地を管理し、小松菜、ねぎ、レタス、アスパラガス、季節野菜など少量多品目を栽培。収穫も一つひとつ手で行い、夏の除草と虫との格闘も、すべて一人でこなしています。

 

もちろん有機JASで指定されている肥料を使う、農薬を使わない、ということは守っていますが、特別こだわりを持って野菜を作っているわけではない、と仰る助川さん。ただ、「この手で、自分でも食べても良いと思える野菜を作っている」という自信はあります。近所の方が買いにきて「この前の野菜、美味しかったよ!またちょうだい!」と喜んでくれる、笑顔と声を直に感じられるのが、一番のやりがいだ、と語ります。

安心な野菜を選ぶ人が増え、農業で生計を立てられる世の中へ

地元のみなさんのために、安全で美味しい有機野菜を作り続けている助川さんですが、最近世の中で物騒な事件が起きたり、アトピーなどの原因不明の疾患に悩む人が増えているのは、やはり食べ物の影響も大きいのでは、という危機感を感じています。そして助川さんは、この国で有機農業が広がっていくには「人々が安心な野菜を選ぶ正しい知識を身につける」そして「就農希望の人や農家が農業で生計を立てられるように、行政や国がサポートする」の2つが重要だと考えています。

 

1つ目の「人々が安心な野菜を選ぶ正しい知識を身につける」には、有機野菜が安心な野菜であるということをデータとして提示していくことが必要です。時間はかかりますが、少しずつでも日本で暮らす人々の意識を向上していくことで、有機野菜を選ぶ人を増やすこと。需要が増えれば、有機野菜を栽培する農家も増えていきます。

 

そして2つ目の「就農希望の人や農家が農業で生計を立てられるように、行政や国がサポートする」では、現在でも就農支援の制度はありますが、就農後も自然や天候に左右され続ける農業という仕事を、継続的にサポートしていく制度が必要だと考えています。現在は農業を子どもに継がせたくない、という農家さんも少なくありません。耕作放棄地が増えれば、どんどん荒地が増え、環境にも影響があります。「子どもに農業を継いでもらいたい」「農業を始めたい」そういう人が増えていくように、農業に関わる人だけでなく、この国全体でサポートしていくことが急務です。

 

たったひとりで有機農業を続けている助川さんは、次の世代、そしてこの国の将来を見据えています。

生産者情報

みよし農園

代表者:助川己義
住所:茨城県那珂市額田南郷1953
主な栽培品目:小松菜、レタス、ねぎ、アスパラなど