
店頭用POP配布
店舗様向けに、本ページで紹介している農家の店頭用POPを配布しています。
下記「プリントする」ボタンをクリックするとブラウザの印刷ダイアログが表示されますので、ご自由にプリントアウトしてご活用ください。

建設会社が有機農業に挑む。そう聞くと、唐突に感じる人もいるかもしれません。しかし、要(かなめ)建設の取り組みには一貫した想いがありました。同社が掲げるパーパス「まちと環境、そして人々の健康に尽くす」。その言葉どおり、地域課題の解決と食の安心、そして長年培ってきた建設・土木事業と結びつけながら形にしたのが農業事業なのです。
現在、同社が手掛ける農地は約25ヘクタール。中心となるのは茨城が誇る品種・常陸秋そば。そして、近年は有機野菜の栽培も本格的に広げつつあります。現場を引っ張っているのは入社15年目で1級土木施工管理技士の小林さん。そこに農業をやりたくて新卒で入社し、3年目になる佐藤さんが加わって、二人三脚で農業課を築いてきました。
要建設が農業に参入したのは2021年のこと。きっかけは、同社が運営する飲食店で提供していた蕎麦を、原材料から自分たちの手で届けたいという想いでした。常陸秋そばの蕎麦粉は他からの仕入れに頼っていましたが、一貫した体制を整えれば、品質の安定だけでなくブランドとしての深みも生まれると考えたのです。
この決断を後押ししたのが、県北エリアで増加していた耕作放棄地の存在でした。高齢化によって草刈りや耕うんが難しくなり、農地を維持できない方が増えていた地域状況を前に、「農地を借りて活用してほしい」という声が多く寄せられていました。要建設はこれを地域貢献の機会と捉え、所有ではなく“借地”という形で土地の再生に乗り出したのです。
さらに特徴的なのは、初めから有機栽培に挑戦したこと。同社のパーパスである「健康に尽くす」という理念を、農業という新しいフィールドでも実現したいという想いが強くあったため、地域課題の解決と安心・安全な食の提供、その両方を満たす形として、有機への挑戦は自然な流れだったと言います。

有機栽培は、農薬も化学肥料も使えないため、「想像以上に難しいものだった」と小林さんは語ります。特に雑草の成長は凄まじく、真夏には刈っても2週間ほどで元通りになってしまい、また、畑の周囲はトラクターが入らないため、肩掛け式の草刈り機を使い、ひたすら刈り続ける日々が続いたそうです。草刈りだけで夏場に体重が6キロも落ちたほどで、「本当に大変でした」と振り返ります。
また、土づくりも試行錯誤の連続でした。建設の現場で扱う“土”とは全く性質が異なり、何を施せば作物が健やかに育つのか手探り状態だったとのこと。茨城県の農業改良普及センターに相談し、土壌分析を行いながら、牛糞堆肥や鶏糞、緑肥、有機JASの資材など、あらゆるパターンを試してきました。しかし、どれも一長一短で、同じ方法を繰り返した年は一度もありませんでした。さらに、有機JAS認証の取得も大きな壁でした。特に輸出を視野に入れていたため、どの認証機関を選ぶかについて慎重な判断が求められたようです。
ただ、その過程には苦労だけでなく、確かな楽しさもありました。試した方法が収量や品質として返ってくること、そして答えが一つに定まらない「奥深さ」に魅力を感じるようになったからです。また、畑の周囲に広がる自然も心を癒してくれました。春にはヤマザクラが咲き、朝には雲海が見える日もあります。有機農業に携わることで、仕事そのものが生活を豊かにしてくれると感じる瞬間が増えていったそうです。

収穫された常陸秋そばは自社の飲食店で提供されています。お客さまから「蕎麦本来の香りが感じられて、とてもおいしかった」と言われるたびに、栽培から関わってきた喜びを強く実感するのだといいます。常陸秋そばの魅力はなんと言っても香りの強さにあります。茹でた時の熱い湯気にふわりと立ちのぼる芳醇な香ばしさはこの品種ならでは。噛むほどにそば本来の甘みと旨味がじんわりと広がり、のどを通る瞬間には余韻が残ります。蕎麦の実の粒がしっかりしているため、風味が濃いのに決して重たくありません。新蕎麦の季節にはさらに香りが際立つため、手応えを感じる場面が多いようです。
また、地域の方々からの感謝の声も励みになっています。放棄地の管理は特に夏場が過酷で、草刈りだけでも相当な負担になります。その作業を要建設が担うことで、「草刈りをしてくれて本当に助かるよ」と声をかけてもらえることも増えました。放棄地の管理は本当に大変なので、感謝の言葉が励みになっていると言います。このように農業という枠を超え、地域コミュニティの一部としての役割を担っていることを常に感じているそうです。
野菜づくりを担当する佐藤さんも、入社3年目ながら確かな成果を上げています。冬野菜は虫の被害を受けやすく商品にならない年が続きましたが、ネットを張るなどの対策が功を奏し、今季は自社の飲食店へ出荷できるまでに育ちました。来年はミニトマトを中心にハウス栽培へ移行し、収穫量の拡大も視野に入れています。

今後、要建設は常陸秋そばのブランド価値をさらに高めていき、常磐線沿線に自社の飲食店「まち庵」を広げ、最終的には東京、さらに全国へ展開したいという構想があります。また海外から蕎麦の研修生が来訪し、蕎麦打ちの資格を取得した例もあることから、アジアを中心とした海外展開も視野に入っていると言います。自社で育てた有機蕎麦が海を渡る未来も、決して遠くはなさそうです。
さらに、ミニトマトだけでなくビーツなど野菜の品目拡大も進行中です。農業体験や蕎麦打ち体験、自社で運営している宿泊施設との連携などで、“地域に人が集まるサイクル”をつくる取り組みも同時に進めています。地域の過疎化や高齢化といった課題に対し、農業という枠を超えて貢献の場を広げていきたいというのが要建設の考えです。
有機農業の大変さに向き合いながらも、「おいしかった」「助かりました」の声に背中を押され、歩み続ける小林さんと佐藤さん。
要建設が描く“有機の未来”は、地域の未来そのもの。これからの展開にますます目が離せません。
代表取締役:高野 賢
住所:〒310-0804 茨城県水戸市白梅1-2-36
URL:http://www.kaname-k.com/
主な栽培品目:常陸秋そば、ミニトマト